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月刊BE-PALで私が連載する『ルーラルで行こう!』は、一次産業の新しいうねりや、都市で芽生えつつある“自然目線”な取り組みの先取りルポです。いま発売中の3月号では「海藻農法」を取り上げています。
株式会社海藻研究所の新井章吾さん(写真)が提唱されている古くて新しい栽培技術で、資材は海岸に打ち上げられたホンダワラのような非食用海藻です。

これらの海藻を野菜の株元に置くだけで、作物が元気に、しかもおいしく育つというのです。
えっ? そんなうまい話があるのか? あるんですね。秘密は海藻に数多く含まれている微量元素。

作物の必須三大栄養素といえば窒素、リン酸、カリですが、私たちが糖質やタンパク質、カルシウムだけでは生きられないように、植物体内の各種酵素がスムーズな活動を行なうには、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、コバルトなど多種多様なミネラルが必要です。
植物の生理メカニズムにはまだ知られていないことが多くあります。アミノ酸のような有機化合体も根から直接吸収できることが知られるようになったのも近年です。

生命は海に溶け込んでいる各種元素の組み合わせから偶然生まれました。ふだんあまり意識することはありませんが、私たちの体の構造も、命を永らえるシステムも、元素の出し入れで成り立っています。
食べる、生きるということは、見方を変えると元素をめまぐるしく循環させる行為なのです。

要求される元素の種類や量は、生命体によって異なります。とくに多く必要な元素もあれば、ごく微量でよいけれど欠かすことのできない元素もあります。地球上のほぼすべての元素が存在する場が海であり、生命体の中でも多種多様な元素を含んでいるのが海藻だと、新井さんは言います。

生態系は、これら元素のやりとりが自律化されています。足りなくなれば巡り巡って自然に補給されます。農業は森が100年単位で築く生態系の法則を1年に凝縮したものといえますが、栄養=元素の持ち出し量が多いため、何らかの形で補ってやらなければなりません。三大栄養素については意識されていますが、抜け落ちがちなのが微量元素の存在です。
海藻を施用した圃場では、生育が旺盛で病害虫に強く、味もよくなるという共通の結果が、ミカン、ユズ、サクランボ、米、ダイコン、葉物野菜などにおいて確認されています。とくに、三大大栄養素である窒素、リン酸、カリ肥料を投入しない、いわゆる無肥料栽培で顕著な効果を確認できるそうです。

海藻のこのような肥料効果は、最近発見されたわけではありません。海辺に近い農地では昔から経験的に知られていました。北欧では荒れ地を牧草地や農地に改良するため何世代にもわたって海藻が投入されました。
その循環の知恵は、社会の近代化に伴う金肥(購入資材)の発展により忘れられてしまいました。

一方、現在の漁村では、荒天のたびに漂着するホンダワラやアナアオサのような非食用海藻は、漁港機能を阻害する厄介者として焼却や埋土処分されています。
とくに内湾や汽水湖のような半閉鎖型の海域は、農地から流れ込む窒素やリンの影響で海藻が繁茂しやすい環境にあります。
栄養を吸収して大量発生した海藻をそのまま放置すると、分解の過程で猛毒の硫化水素ガスが大量発生し、水域の漁業資源のみならず、生態系にまで悪影響を及ぼします。

海藻をもう一度肥料として活用することは、有機農業に新たな価値・展望をもたらすと同時に、海―里―山の循環を再生し、漁業や地域の自然が抱える社会的な課題を解決する手立てにもなるといいます。

私も、この春から試験栽培を始めてみようと思います。
ちなみに、海藻は鋤き込まないことがポイントだとか。土の中に入れると微生物が急激に活性化し(微生物も大喜びするのです)、あっという間に分解してしまうためです。少しずつ切らさないように効かせることがポイントだそうです。

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