Img_d1636e70644a0f119f75e0b351c50732
Img_77b6f6bcc794963249c6f9bcbf8c98f5

本来はどうだったのか――。
このことを知るのはとても大切なことだと思います。

たとえば漬け物。本来は塩と微生物の力で、常温でも腐敗しないようにした保存食でした。発酵の過程で生じる代謝物が乳酸のような防御物質であり、アミノ酸のようなうまみ成分です。
ですから、微生物が関与しない“浅漬けの素”で作った漬け物なるものは、私はサラダだと思っています。

では、お酒における「本来」とはどんなものか。
それは純米酒であり、空中に漂う硝酸還元菌や乳酸菌、さらには酵母をも自然に呼び込んで酒母を育てる生酛(きもと)造りになるでしょう。

生酛の「本来」をもっと突き詰めていくと、今度は木桶という道具にたどり着きます。

多孔質素材の木は、醸造を担う微生物たちの優良なゆりかごです。
表面が平滑なステンレスやホーローのタンクの場合、洗浄した時点で微生物はほぼリセットされますが、木桶は洗っても一部の微生物が微細な孔の内部にとどまります。
つまり次の仕込みの元種の一部となり、蔵の歴史とDNAを真の意味で受け継いでいくのです。

最近の醸造界では、酒に限らず醤油にしても味噌にしても「本来」という言葉が持つ価値に注目が集まっています。
創業××年という数字だけの伝統ではなく、技術もしっかりと受け継ごう、あるいは再興しようと考える蔵元が、多くはありませんが出てきたように思います。

ところが、木桶まではなかなかたどり着けない。

それはすでに木桶を手放してしまって久しいから。同時に、醸造用の20石(3600ℓ)もある大きな木桶を作れる職人がいないためです。

伝統的な大桶を作れる、大阪にある日本で唯一最後の工房は、2020年に生産をやめる宣言をしています。

「本来の醸造」の未来に危機感を覚えた蔵元や桶職人、販売業者が、自ら桶作りの技術習得を目指す「木桶職人復活プロジェクト」(代表=ヤマロク醤油・山本康夫さん)が始まって5年。
木桶復活は、また新たな段階に入りました。

秋田市の新政酒造といえば、きょうかい6号酵母を輩出した歴史ある蔵です。そして近年、この蔵の名声を高めているのが、緻密な酒質設計によってリリースされる21世紀の生酛ともいうべき個性的な酒の数々。

蔵を率いるのは、東大文学部卒でフリーライターという異色の経歴を持つ8代目の佐藤祐輔さん。

佐藤さんが目指しているのが、全量木桶仕込みの生酛です。

目標実現のためには、現状では自分たちで木桶を作る必要があります。
秋田は杉の名産地。どうせ桶を作るなら地元産の杉材で。
木桶で醸すのに相応しい米は、慣行栽培が広まる以前の「本来」の米、つまり有機無農薬栽培米です。

「本来」の地酒に帰る。これが新政の将来展望で、すでに農業生産法人を組織し米作りに着手しています。桶作りの必然として、近い将来は森林の施業にも乗り出すことになるだろうとのこと。

農政や林政に振り回されない再生産可能な米作り・森作り。
これは集落を存続させる基本担保です。
もうひとつの担保は担い手。農山村で若者が働ける場作りです。

価格競争に巻き込まれない日本酒を作り続けるために必要なものは、ロマンと付加価値。すなわちこだわりであり、ストーリーであり、共感性です。

つまり魅力的な日本酒を追究し続けることで、地域そのものを再興しようというのが、佐藤さんの構想です。

今の日本酒の状況は、ひところのひどい味を知っている酒呑みとしては天国です。
しかし、みんなで「旨い!」に前のめりしていった結果、テクニックが収斂して没個性化に向かっているという皮肉があります(あくまでも・・・個人の見解です)。

新政は、日本酒の「本来」を追い求めることで、旨いの先にある古くて新しい価値の存在を示そうとしているようにも見受けました。

関心のある方は、BE-PAL7月号「ルーラルで行こう!」をご覧いただければ幸いです。
なお今号は、付録のスキレットが発売以前からもの凄い反響で、売り切れの書店が続出しているようです。

※現時点でほぼ売り切れのようです。入手ができなかった場合は図書館などでお読みいただけますと幸いです。

Comments

Oilstone | 06.25.2018 20:17
はじめてのコメントです。興味深いです。そういえば、古い造り醤油屋の前に大桶が飾られているのを見たことがあります。かつては、あれが実際に使われていたのでしょう。

そうだ。隣町でマキリが売られていました。内陸なのに。かくま先生の
「はたらく刃物」
で思い出しました。万一ご興味がありましたらメールをください。
かくまつとむ | 06.27.2018 06:06
Oilstone さん、メールをいただきありがとうございます。木桶仕込みは、今でこそ特別視されていますが、暮らしの中で刃物を使うのと同じで、本来は当たり前のことでした。
隣町というのは秋田市の隣ということでしょうか。マキリの文化性、面白いですね。
oilstone | 06.27.2018 20:43
お返事ありがとうございます。桶や樽の登場は、きっと小革命だったでしょう。かめより大きく割れにくいのですから。

隣町と言うのは、私が住んでいる町の隣と言う意味です。さて、どんな使い道があるのでしょう。
Balenciaga | 11.20.2018 07:35
http://www.pandoracharmsjewelrys.us.com/
http://www.air-maxplus.us/
http://www.nikeoutletsfactory.us.com/
http://www.jordan-4.us.com/
http://www.pandorajewellery.us.com/
http://www.pandorabracelets.us.com/
http://www.jordan10.us.com/
http://www.nikeoutletstoresonlineshopping.us.com/
http://www.adidas-yeezy.org.uk/
http://www.pandorajewelryofficial-site.us/
http://www.airjordan11s.us.com/
http://www.fitflopsaleclearances.us.com/
http://www.nikeshoes-formen.us/
http://www.nmdxr1.us/
h

Post a Comment


*印は必須項目です
captcha
コメントする